school of life❊。*
−廊下−
「学生寮を案内しろ?」
永友が不在ということで、飴矢が学生寮の一連の雑務に徹することになったとさゆからつきさっき聞いたばかりだが、へー永友休んだんだ強者ーとかそんな印象しか抱いていなかった。
そして飴矢に学生寮を案内しろと言われたのが現在の状況であった。
「頼むよー、俺学生寮とか行ったことないから造りわかんねんだわ、」
「飴矢って生徒会長だよね?」
「…ああ。」
「ダッサ。」
「ひでぇ!」
飴矢は妙に人気があった。
人気があったなんてもんじゃない。
一年の秋の選挙であいつは推薦され、
のぶっちぎりの獲得票数で生徒会長に選ばれた。
3年生からは、ルックスだとか、飴矢の妙に先輩受けする性格や態度、言動がポイントになったらしいが。
−それにしても。
人気、というよりは何か宗教ではないかと思うほどのそれには、さゆも感心していた。
飴矢と小学生から一緒だというさゆも
『あそこまでいくとキモい』とか
言ってしまうくらい。それは前代未聞とも言えることだった。
そして不思議だったのは、落選した2年生から文句たれた言葉も、飴矢を中傷する言葉も出なかったということだ。
表に出てないだけかと思っていたが、
彼らは飴矢のサポートに徹していた。
−まあ、彼らがそういう立派な人間だというだけのことかもしれないのだが。
「そこのスライドエレベーター乗って」
「おお!これ乗るの初だわ!」
横向きに動くそのエレベーターに乗り、
しばらくして扉が開けばもうそこは
学生寮なのだ。
横向きのエレベーターがそんなに珍しいのか、飴矢は久しぶりに興奮している様子であった。
−これ、そんな珍しいかな?
そんなことを思いながら、横に動いていく景色を見つめる。
ああ、あのカフェテリア久しくいってないな。
〜♬*+゚♪ .•*¨*♬♩.。〜
「おー、酔った。酔ったよ俺は。
横に動いていく景色に酔った。
これに毎日乗ってる奴なんなの」
「さりげなくあたしを侮辱するな」
−そりゃ最初は。気持ち悪くなったけど。
2日ほどで慣れてしまう程度にはエレベーターの乗り心地はよかったのでそんなに苦労を覚えたような気はしない。
「…じゃあ案内しようかね」
飴矢とあたしの2人での作業は淡々としたものだった。
本当に飴矢は今回に関しては切羽詰まっていたようで、いつものような馴れ合いはなく、質疑応答のような会話ばかりで終了した。
「まあ、だいたいわかった。」
「そっか。よかったね。」
「悪いな急かして案内させて。
カフェテリアで紅茶でも一杯おごろうか?」
飴矢は少年じみた顔でニタっと笑う。
「……あそこ、紅茶はフリードリンクでしょ、」
「ばれたか」