school of life❊。*





コトン、紅茶の入った器を皿に置く音。
ごゆっくりどうぞ、とアルバイトかなにかの若い女の人はそう言ってキッチンの奥へ下がっていった。


フリードリンクと言えどもここの紅茶はおいしい。
一年生のとき初めて入ったカフェテリアはとても怖かった思い出がある。

上級生ばかりの中の空間に入ってしまったがすぐ抜けることもできず、一年生がいる珍しいな程度の視線にねっとり絡まれた。
そのとき、確か飴矢に誘われ一緒に入ったのだが、飴矢は至って普通に、堂々としていた。

しかも、一年生がカフェテリアに入ったからといって特に文句を言われることもなくここの紅茶美味しいのよタダだし、とか
お金かかるけどパフェがおいしい、だの
無駄にアドバイスを受けてしまうほどの
待遇であったのは飴矢と一緒に入ったからだろうか。


「初めて来たのいつだっけか」


ちょうど今考えていたことを飴矢は口にした。



「2学期の頭くらいじゃなかったけ?
あたしがカフェテリアをチラチラ見てたら
飴矢が入っちゃおうぜってさ」



「あーあー!垣村めっちゃちっちゃくなってたよな!」



「だって周り上級生ばっかりだったし!」



「でもまあ、みんな優しかったろ?」



「…ま、そうだけどさ…」


石みたいな可愛らしい砂糖を紅茶に入れる。溶けていくのがなんとなく楽しい。
−この紅茶もともと甘いのになんでいれたんだろうあたし。



「これから入る一年もさ、何人かはここに臆さず入ってくるんだろうなと思うと…
なんかおもしろいよな」



「そう?」




「だって、俺らこれから2年になるけど
ここに一年が入ってきても別に何とも思わないんだぜ?
でも、一年坊主はびびりながら、堂々と入ってくるんだ。」



−実際、先輩という立場に立ってみれば。
確かにそんなこと思わない。
ということは、私達の先輩もきっと、さして不快には思っていなかったのだろう。
あたしと飴矢が入ってきたことに。


ただ、一年怖がってるのかな、とか
単純な疑問と、好奇心だけなのだ、あるのは。



「あしたの入学式、楽しみだね」



「ああ、そうだな」


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