グッバイ・メロディー
きょうは新しい曲がひとつもないかわりに、トリだったあまいたまごやきはアンコールにも出てきてくれた。
最後にやった『パープルホリック』は、いちばんはじめにライブに出たときの1曲目で、なつかしくて、いとおしくて、どうしようもなく感慨深かった。
こうちゃんは帰り道から、もう死にそうというか、心ここにあらずという感じだった。
やっとひとつ区切りがついて、安心したら魂が抜けてしまったのかもしれない。
そんな彼は家に帰るなりお気に入りのもちもちクッションに身を預け、ぐったりしたまままったく動かない。
ケースからエレ吉くんを取り出しもしないで、もらったチョコやプレゼントたちの紙袋も放り出して、一言もしゃべらないまま、ずっと目をつむっている。
せっかくカフェオレをいれてもぜんぜん起き上がらないの。
だから寝ているのかと思って顔を覗きこんだのに、その瞬間にまぶたを上げるから至近距離でばっちり目が合って、心臓が止まるかと思った。
「ありがと」
寝ているみたいな声でもごもごつぶやいて体を起こし、マグカップに口をつける。
そして放り投げてあった紙袋を引っぱってきて中身を取り出すと、こうちゃんは黙々と、それらを食べものとそうじゃないものとに分けはじめた。