グッバイ・メロディー


毛先にむけて金色のグラデーションになっているアキくんのきれいな髪と、重ための黒を几帳面に切りそろえてあるヒロくんのつやつやな髪とをぼけっと見比べていると、こうちゃんが隣にやって来た。


「はい。季沙も」

「わー! ありがとう」


わたしのいちばん好きなチョコのドーナツを迷わずに差し出してくるあたりがさすがだ。


生クリームのドーナツを吸いこむような速度で食べ終えてしまったこうちゃんは、輪っかの小麦粉を頬張るわたしをしばらく満足そうに眺めたあとで、おもむろにケースからギターを取り出し始めた。


フルブラックのストラトキャスター。

名前はエレ吉くん。


相変わらずピカピカでかっこいい!


床に座ったままのこうちゃんは自然な動作でギターを抱え、いつもの癖ってふうに指をチロチロと動かした。


本当に、きれいな指だな。

細くて長いのにちょっとホネホネしていて。

触ると指先はすごく硬いの。
なんたって6本の弦が恋人だもんね。

< 13 / 484 >

この作品をシェア

pagetop