グッバイ・メロディー
「いい感じじゃん!」
夢のなかの出来事のようなセッションを終えた瞬間、アキくんがマイクを通して声を上げた。
「歌詞が意味不明」
こうちゃんがなおもエレ吉くんをいじるのをやめないで淡々と答えた。
「洸介がちゃんと書いてくれんなら、オレもちゃんと書くよ」
「わかった」
いつもこんな調子で、信じられないくらい軽い会話。
だけど詞を書くアキくんと、曲を書くこうちゃんは、こんなやり取りをしたあとで素敵すぎる歌を本当に生み出してしまう。
「次の対バンの初っ端はいまのやつだな」
いまのいままでクールすぎるベースを弾いていたとは思えないほど和やかに、トシくんが言った。
「いいかも」
少し考えたあとで、こうちゃんがゆっくりとうなずいた。