グッバイ・メロディー
「絶対、後悔すんなよ」
アキくんが念を押すように言った。
「させないんだろ?」
トシくんがからかうように答えた。
「させねえし、ついでにおまえんとこのオヤジさんも、オレらが首を縦に振らせてやる」
「いやあ、うちは来世に持ち越さない限り無理だと思う。まともに話し合ってわかってくれるような人じゃないし」
「そんなもんわかんねえだろが」
「いや、いいよ、ありがとう。ハナからそういうつもりで俺はいまおまえらと肩組んでるんだ」
息子にここまで言わしめるお父さんとは、いったいどんな人なんだろう。
「おやじにはおやじで命がけで守りたいものがあって、簡単に譲れるようなものじゃないことは、ここまで育てられてきたからこそよくわかる。だから、それをぶっ壊そうとしてるドラ息子は、家を出ることにするよ」
ベースはもうないけど、
と、トシくんは困ったように笑った。
「え、でも、これからどうするの……?」
あまりのことに思わず口を出してしまった。
だってきっといまのは冗談なんかじゃないって思ったの。
トシくんは本気で、これまでの人生を全部放り投げてでも、3人といっしょにいることを決めたんだ。