グッバイ・メロディー
「すごいねえ。いっこずつ夢が叶っていってるんだね」
「うん。でも今回のは、これからどこまでいけるのか見定めるものさしでもあると思ってる」
夢のようなことが起こっても、信じられない理想が手に入っても、こうちゃんは、いつもどこかでしっかり地に足が着いている。
それは冷めているとか、卑屈になっているとか、謙虚だとか、そういうたぐいのものじゃなくて。
たぶん、わたしたちが定期テストを受けては将来について考えているような感覚に近い。
はるか遠い夢じゃなく、日々のなかにある現実として、こうちゃんは冷静に音楽と向きあっているんだ。
「楽しみだね!」
「うん。楽しみ」
だけどね。
やっぱりわたしは、17歳のクールな男の子に少年みたいな笑顔をさせてしまう楽器を発明した人に会って、ありがとうって伝えられたらいいのにって、ばかげたことを思うくらいにはいつも夢心地なんだよ。
困っちゃうね。