グッバイ・メロディー
⋆°。♬
はじめて、みちるちゃんの家に来ている。
ひとり暮らしのマンションはものすごく広いというわけではないけど、隅から隅までみちるちゃんの色で染まっていて、まるで彼女ひとりだけのために用意されたお城みたいだ。
特にこの光沢のあるボルドーのレザーソファ!
特注なんじゃないかってくらいしっくりくるよ。
なんだかおそれ多い気持ちになって、軽々しく腰をかけるなんてできない。
「なに、どしたの。座っていいよ?」
「いや、なんか緊張しちゃって……」
「えー? あはは、べつにオトコの家に来たわけでもあるまいに!」
こうしてみちるちゃんちにおじゃました理由はただひとつ。
それはきょうの夕方、なんと、あまいたまごやきがラジオにゲスト出演するからなのだ!
こうちゃんから報告をもらったのは、おとといの夜だった。
急な話でとても信じられなかったけど、ラジオ局のホームページを見てみたら本当の本当に本当なんだもん。
お父さんもお母さんも清枝ちゃんも大騒ぎで、あーでもないこーでもないと苦戦しながら、ホコリまみれのラジカセで録音予約していた。
ラジオに出ると言っても、限定放送の地方局の番組のコーナーに、ほんのちょこーっとの時間だけ、らしいのだけど。
それでも、うれしいよ。
すごいよ。
まだちょっと信じられないよ。
ちゃんとしゃべってね、
と、いつも寡黙すぎる幼なじみにはいちおう念を押しておいた。
でも、どうかな。
きっと結局あんまりしゃべってくれないだろうな。
せめて10文字くらいはしゃべってくれないかな。
自己紹介と、あとなにかひとつくらいは、がんばってほしいな。
はじめて、みちるちゃんの家に来ている。
ひとり暮らしのマンションはものすごく広いというわけではないけど、隅から隅までみちるちゃんの色で染まっていて、まるで彼女ひとりだけのために用意されたお城みたいだ。
特にこの光沢のあるボルドーのレザーソファ!
特注なんじゃないかってくらいしっくりくるよ。
なんだかおそれ多い気持ちになって、軽々しく腰をかけるなんてできない。
「なに、どしたの。座っていいよ?」
「いや、なんか緊張しちゃって……」
「えー? あはは、べつにオトコの家に来たわけでもあるまいに!」
こうしてみちるちゃんちにおじゃました理由はただひとつ。
それはきょうの夕方、なんと、あまいたまごやきがラジオにゲスト出演するからなのだ!
こうちゃんから報告をもらったのは、おとといの夜だった。
急な話でとても信じられなかったけど、ラジオ局のホームページを見てみたら本当の本当に本当なんだもん。
お父さんもお母さんも清枝ちゃんも大騒ぎで、あーでもないこーでもないと苦戦しながら、ホコリまみれのラジカセで録音予約していた。
ラジオに出ると言っても、限定放送の地方局の番組のコーナーに、ほんのちょこーっとの時間だけ、らしいのだけど。
それでも、うれしいよ。
すごいよ。
まだちょっと信じられないよ。
ちゃんとしゃべってね、
と、いつも寡黙すぎる幼なじみにはいちおう念を押しておいた。
でも、どうかな。
きっと結局あんまりしゃべってくれないだろうな。
せめて10文字くらいはしゃべってくれないかな。
自己紹介と、あとなにかひとつくらいは、がんばってほしいな。