グッバイ・メロディー


みちるちゃんがお茶をいれてくれているあいだ、いろいろと落ち着かなくてひとりでそわそわしていると、ふと、見覚えのあるネクタイが目に入った。


「あれ? これ……」


同時にあたたかいほうじ茶が目の前に出される。

まさかこんなパンクな部屋でほうじ茶が出てくるとは思わなくて、ちょっとびっくりする。


「あー、それね? スルーしてくれると嬉しいんだけど、まあそういうわけにもいかないか」


あちゃー、みたいな。

やっちゃった、みたいな。

隠し忘れてた、みたいな。


そういう感じの顔を見て、確信した。


「ねえ、もしかして……アキくんの?」


変にうわずった声になってしまう。


「そうそう。あの子ってちょっと抜けてるとこあるから、今朝寝坊してネクタイ締めずに学校行ったんだよね」


今朝、って?

ネクタイ締めずに……、って?


「ねえ待って、ちゃんと説明して!?」

「ねー。ほんとにね」


笑ってごまかされている。

わははじゃないよ!


いったいどういうことなの?


ずっと、気になってはいたんだ。

アキくんとみちるちゃんってどうなっているんだろうって。


アキくん、ここ最近は女の子と遊んでない感じがしたし、だからといって特定の彼女がいるふうでもなかったから、もしかして……とは思っていたの。

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