グッバイ・メロディー
だけど、なんでかな。
なんだろう、この気持ち。
幸せの一言では片づけられないような、甘ずっぱいみたいな、味がする。
だってスピーカー越しに聴くこうちゃんの声は、いつもと少し違うような気がしたの。
普段はうんと近くで聴いているはずの声。
あまり抑揚のない、こもった感じのちょっと低い声。
いつもたくさん、季沙って呼んでくれる声。
おかしいな。
ラジオ出演、すごくすごくうれしいはずなのに。
なんだろう。
うれしい、だけじゃない。
胸がむずむずする。
なんだかいますぐに、こうちゃんの声を直に聴きたい気がしている。
「季沙、急にそわそわしてどうした?」
「なんか、こうちゃんに……会いたいなって……思って」
きょとんとしたみちるちゃんが、次の瞬間いきなり大笑いし始めた。
「ほんっとーにあんたたちっておもしろいね!」
早く会って、声を聴いて、確認したい。
こうちゃんは、変わらない、お隣のこうちゃんだってこと。
ラジオのむこう側にいたこうちゃんも、ちゃんとこうちゃんだったってこと。
こうちゃんがどんどん有名になっていくたび、うれしくって、わくわくして。
そして――どこかで、とても不安になる。