グッバイ・メロディー
こうちゃんはいつか、わたしを置き去りにしたまま、遠いどこかへ行ってしまうんじゃないかな。
だって、こうちゃんのたどり着く光り輝くその場所は、きっととても特別なところなんでしょう。
誰もが簡単に掴めるわけじゃないものを、こうちゃんは少しずつ、それでも確実に、手にしようとしているんだ。
「心配しなくても洸介くんは変わらないよ」
まるで心を見透かされたようでぎくっとした。
顔を上げると、みちるちゃんは、ちょっとだけおもしろがってるように口角を上げてわたしを見つめていた。
本当に、優しい目だった。
不思議なほど簡単に安心してしまう。
「季沙が変わらなければ、洸介くんもずっと、変わらないでいてくれるよ」
「そう、かな?」
「だってずっと、そうやってふたりで成長してきたんでしょ」
ちっちゃいころのこうちゃんから、
今朝いっしょに学校に行ったこうちゃんまで。
気が遠くなるほど膨大な量を、おぼろげでも、ひとりずつ思い出していく。
こうちゃんは、ずっとこうちゃんだった。
そしてわたしはというと、その隣で、ずっとわがまま放題のわたしで。
こうやってわたしたち、いっしょに大きくなってきたんだね。
そのことだけは忘れていたくない。
だからこうちゃんも覚えていてくれたらいいなって、やっぱりわたしは、わがままなことを思うんだよ。