グッバイ・メロディー
甘えるのも上手だけど、それと同じくらいわたしを甘やかすことも得意なこうちゃんは、そのまま黙ってわたしの数学をすべて片づけてしまうと、
「CD売ろうと思って」
と、あまりにも唐突に言った。
思わず目がテンになる。
いま、なんて言ったの?
CDって?
「いまレコ発にむけて準備してる。年末の対バンのときに手売りする予定」
「レコハツ……?」
「レコード発売。4人でずっと計画してた」
こうちゃんってやっぱりよくわからない。
なにがどうなって、そんなことに至ったの?
なんで突然そんな話をしだすの?
ぜんぜんついていけないよ!
「もしかして、最近帰ってきてからよくアキくんの家に行ってたのはそれだったの?」
夏休みくらいからかな。
そういえばこうちゃん、ギターを背負ってアキくんの家に遊びに行くことが増えたかもしれない。
でも、そういうのは中学のころからたまにあったから、ぜんぜん気にも留めていなかったよ。
「ほんとはアキんちだけじゃなくてスタジオとかいろいろ行ったりしてた。内緒にしてたのは、まだどうなるかわかんないし、季沙にはちゃんと完成してから言おうと思ってて」
そこでちょっと言葉を止めると、こうちゃんは握っていたシャーペンをわたしにそっと手渡した。
「でもいろいろ考えた結果、4人の総意で、やっぱりジャケは季沙に描いてもらうことになったから」
そんな、決定事項みたいに言われましても。