グッバイ・メロディー


久しぶりにふたりきりでいるこうちゃんの部屋。

たった1週間のあいだ、たったひとり多かっただけなのに、ちょっと殺風景な感じがしてしまうのはなんでだろう。


「ね、解決……したのかな?」

「さあ。ヒロも相当な頑固者だし、そう簡単に折りあいはつかないんじゃない」

「そっかあ」


そうだね。

そんなにたやすく変えられるような気持ちでヒロくんはおうちを飛び出してきたわけじゃないと、わたしも思う。

きっと想像もできないくらい大きな覚悟をもって、こうちゃんのところに来たはずだ。


だけどなにか思うところがあったから、アキくんの気持ち、ほんのひとかけらでも伝わったから、ヒロくんは帰ることを決めたんだとも思うんだ。


「でも、ヒロが本気で考えて出した答えなら、どんなでもアキは納得する気がするけど」

「うん、ぜったい、そうだよね」


本人たちはぜんぜん似ていないと言いきるけど、やっぱりよく似た兄弟だと思ったよ。


決めたことにまっすぐで。

譲れないものは、とことん譲れなくて。


そして本当は、お互いのことを誰より気にかけている。

そう、はからずも傷つけあってしまうくらい。


こうちゃんもわたしもひとりっ子だから、きょうだいの関係ってあまり身近じゃなくてよくわからないけど、アキくんとヒロくんを見ているといつも、いいなあ、と思わずにはいられない。

どんなにわかりたくなかろうと、どうにもわかってしまう、わかられてしまう存在が地球上にひとりいるのは、きっととても心強いことだと思うんだ。

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