グッバイ・メロディー


「白いね……大きいお花が、いっぱいついてるの」

「うん」

「お母さんと買い物行ったときに一目ぼれしちゃって」

「うん」

「着たかったな」

「……ん」


ドライに見えて実はとても気遣い屋さんのはなちゃんが、事情を知るなり夏祭りに誘ってくれた。

だけどすでに彼氏さんと約束していることなら知っていたし、そんなことあってはならないと思って、さすがにお断りした。

はなちゃんの彼氏さんを、わたしと同じ気持ちにさせるのは絶対ダメだと思ったの。


「来年は一緒に行こう」


守れない約束はしないほうがいい。

来年、いまよりもっと忙しくなったこうちゃんに「やっぱり無理」と言われたら、わたしはきっとひどい言葉を使って責めてしまうと思うから。


だから、なにも答えなかった。


いくら考えてもさっぱりな数学の設問に、そろそろ頭がおかしくなってしまいそうだよ。


「季沙、こっち来て」

「まだ課題終わってないもん」

「……ごめん、怒んないで」

「怒ってない」


こうちゃん、困り果てている。

だけどわたしがこんなにめんどくさいコになってしまったのは、ちっちゃいころから自分がさんざん甘やかしてきたせいなんだから。

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