グッバイ・メロディー
「こうちゃんがいなくても、わたしはべつにさみしくないよ」
こんなバレバレのしょうもない嘘に、優しいこうちゃんは、それでもとても傷ついたような顔をしてくれるんだね。
「俺はさみしい」
その上そんなことまで言ってくれるんだ。
忙しいのはこうちゃんのほうなのに、全部こうちゃんのせいなのに、自分勝手に、そんなことを言っちゃうんだ。
「そんなの、ずるいよ」
幼なじみが自分のもとへ来ることは諦めたらしいこうちゃんが、おずおずとこっちに移動してきて、うしろからわたしを抱っこした。
まわされている腕から伝わる、嘘じゃない気持ち。
子どもみたいな幼なじみをどうしようって考えてくれている、精いっぱいのがんばり。
「季沙……ごめん」
「わたしも、ごめん、ね」
喧嘩がしたいわけじゃない。
こうちゃんのこと、責めたいわけじゃない。
がんばってって、応援してるって、言いたいよ。
なにも心配することなんかないよって。
わたし、いままで、ちゃんと言えていたはずじゃなかった?
「ね、ギター弾かないの?」
「季沙のチャージ中だから」
かわいそうなこうちゃんのギターたち。
本当はこの場所、みんなのものなのに、いまはわたしがとっちゃって、ごめんね。