グッバイ・メロディー
みちるちゃんが抱えているもの、同じように共有できなくても、きれいに取り除いてあげられなくても、なにもできないとしても、知ろうとすることくらいはできたはずなのに。
わたしはなにもできなかったんじゃない。
なにも、しようとしなかっただけだ。
「そんな顔するくせに、どうして彰人をふったんですか?」
わたしのかわりに口を開いたのははなちゃんだった。
真剣な瞳をした彼女のほうへ目をむけ、みちるちゃんが静かに微笑む。
あいまいな微笑みだった。
答えるつもりはないという顔だ。
「そんなに歳の差が気になりますか。ガキンチョとの未来は見えなかったですか」
「わあ、カワイイ顔してけっこう言うんだね」
「はぐらかさないでちゃんと答えてください」
「なんとも必死だね。もしかしてあのコのことが好きなの?」
人気のない中庭にその音はよく響き渡った。
アキくんの頬を打った右手が、みちるちゃんの左頬にも同じことをしたのだ。
きれいな形をした手のひらが赤く腫れている。
ぶたれたほうより、もしかしたら、ぶつほうが何倍も痛いのかもしれない。
「あいつのこと……べつに好きじゃなかったです」
絞り出すような、とても震えた声。