グッバイ・メロディー
「そんな彰人が、あなただけは諦めきれないって……そう、言うんです」
「あたしはあのコを幸せにできない」
ついに、はなちゃんの大きな目からぽろりと涙が落ちた。
「ごめんね。ありがとう。彰人の気持ちもわかってるけど、いずれ“そう”なるなら、傷は浅いほうが治りやすいと思って」
「どうして、いずれ“そう”なるって、あなたは思うの?」
「その結末ならよく知ってるからね」
ごめんね、とみちるちゃんはもういちど言った。
「臆病なのも、悪いのも、あたしなんだ。感情だけで突っ走れるほどもう若くない」
そっと体を離し、切ない温度でふっと笑う。
「もうね、自分で傷を治せるくらいの力が残ってないんだよ」
「そんなのは彰人が治してくれます」
「そうかな。……そうかもしんないね。たしかに、そういうコだね」
「あいつのこと、信じてやってくれませんか。ダメですか。どうしても……もう、ダメですか」
みちるちゃんはまた笑った。
「信じるとか、信じないとかさ、むずかしいよ。そういうんじゃない」
「――じゃあどういうのなんだよ?」
こみ上がる苛立ちを、隠しきれていないような。
だけどとても切ない、苦しい声が落っこちたのは、あまりに唐突のこと。
ついさっきまでステージの上にいた4人の男子は、バンドマンから学生へと姿を変えて、少し離れた場所からわたしたちを見ていた。