グッバイ・メロディー
⋆°。♬


相変わらずパンキッシュな8畳のお城。

その城主のお姉さんとふたり、ボルドーのレザーソファの前で肩を並べている。


「色気のかけらもない飲み物でごめんね。ウチってお酒かほうじ茶かしかないんだよねえ」


ほかほかと湯気を上げている茶色は、“ルート66”のロゴが描かれたマグカップにも、クリスマスイブの夜にも、たしかにぜんぜん似合わない。


「ありがとう、いただきます」


だけど、口に含むと広がる香ばしさがすぐに体の真ん中をぽかぽかとあっためてくれて、なんだか幸せな気持ちになった。


「急なお誘いだったのにありがとね。しかもせっかくのイブなのに」

「ううん、どうせこうちゃんもいないし、うちのお父さんもふつうに仕事だから、特別なことする予定もなかったの」


それに、みちるちゃんから「またあのコたちのラジオいっしょに聴かない?」と誘われて、それ以上に優先する用事なんてひとつもない。


気前のよすぎるお姉さんは、せっかくだからと、おまけにケーキまで買っておいてくれた。

けっこう強めのラムがきいているショコラ、すごくみちるちゃんらしいチョイス。

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