グッバイ・メロディー
ごめん、と言ったのは無意識だったかもしれない。
「季沙が謝ることじゃないよ。わたしのひとりよがりなんだから」
「でも、ぜんぜん気づかなくて」
「気づかれないようにしてたんだから当たり前」
もう終わったことだからいいの、
と、雪のように真っ白な指先が、スクバのファスナーを勢いよく閉めた。
「わたしはさ、季沙を好きな瀬名くんを好きだったの。そういうブレない人柄に惹かれたの。だからふたりがちゃんと気持ちを伝えあってくっついたのは、当時のわたしが報われたってことなの!」
はなちゃんほどかわいくて、優しくて、強い女の子は、世界中を探したってきっと見つからない。
どうか幸せになってほしいと思った。
こんなことをわたしに思われるのは、もしかしたらお門違いかもしれないけど。
それでも、純粋に友達として、はなちゃんにだけは幸せになってもらわないと困るって、心から思った。
こうちゃんと同じくらい、
もしかしたらそれ以上に、大好きで、大切な人だから。
「ありがとう」
そりゃあもういろんな、ありったけの気持ちをこめて言った。
世界でいちばんの美少女はとても、とても、きれいに笑ってくれた。