グッバイ・メロディー


ごめん、と言ったのは無意識だったかもしれない。


「季沙が謝ることじゃないよ。わたしのひとりよがりなんだから」

「でも、ぜんぜん気づかなくて」

「気づかれないようにしてたんだから当たり前」


もう終わったことだからいいの、

と、雪のように真っ白な指先が、スクバのファスナーを勢いよく閉めた。


「わたしはさ、季沙を好きな瀬名くんを好きだったの。そういうブレない人柄に惹かれたの。だからふたりがちゃんと気持ちを伝えあってくっついたのは、当時のわたしが報われたってことなの!」


はなちゃんほどかわいくて、優しくて、強い女の子は、世界中を探したってきっと見つからない。


どうか幸せになってほしいと思った。

こんなことをわたしに思われるのは、もしかしたらお門違いかもしれないけど。


それでも、純粋に友達として、はなちゃんにだけは幸せになってもらわないと困るって、心から思った。


こうちゃんと同じくらい、

もしかしたらそれ以上に、大好きで、大切な人だから。


「ありがとう」


そりゃあもういろんな、ありったけの気持ちをこめて言った。

世界でいちばんの美少女はとても、とても、きれいに笑ってくれた。

< 354 / 484 >

この作品をシェア

pagetop