グッバイ・メロディー
「ついてきてほしいって、素直に伝えてみたら? それできっちゃんが嫌だって言ったら、もちろん無理強いしちゃダメだけど。でも、きっちゃんがついていきたいって言ってくれたら、それは洸介が押しつけた想いじゃなく、ちゃんときっちゃんの想いだよ。大丈夫だよ」
でも、そうだとしても、俺にはなんの力もなくて。
そう、なんの確証も、保証もなくて。
世界でいちばん大切な存在に、かけなくてもいい苦労をかけることになるかもしれなくて。
彼女が大事にしている家族と、友達と、引き離すことになるわけで。
「連れていって、ついてきてくれたとして……毎日ちゃんと季沙が笑ってくれるのか、わからない」
季沙に一瞬でも悲しい顔をさせるようなことがあれば、俺はきっと自分を許せないだろう。
「うん、でも洸介、なーんにも言わないまま、大好きな人に黙って置いていかれるのってすごくさみしかったじゃない?」
左目から大粒の涙がぼろりと流れ落ちた。
「自分ひとりで全部を抱えて、きれいに解決しようなんて思わなくていいんだよ。もっと周りに頼っていいし、弱音を吐いたって、間違えたっていいの。そのときはおもいきり泣いたっていいの」
優しい声がまるで子守唄のように鼓膜を揺らしている。