グッバイ・メロディー
「だけど、お母さんのせいで、ごめんね。お母さんがずっと放っておいたから、洸介はひとりでがんばる癖がついちゃったんだもんね。ごめんね、洸介」
こんなつもりじゃなかった。
こんなふうに泣いてしまうくらいなら、はじめからなにも話さなければよかった。
「自分の気持ち、我慢しないで、口にしていいんだよ。なにがしたいのか、なにが好きなのか、ぜんぶ教えてほしいよ。そう思ってるのはきっとお母さんだけじゃない」
俺をまるごと包みこむのは、俺より何倍も小さな体。
それなのになによりも力強くて、あったかくて、やっぱり母親は偉大だと思わずにいられない。
そう、だってきっと、父さんが死んでいちばんつらかったのは、きっとこの人のはずなのに。
それでも、俺をここまで育ててくれた。
俺がこれまで好き勝手やってこれたのは、これから好き勝手やっていけるのは、間違いなくこの人のおかげなのだ。
「ひとつ、いいこと教えてあげよっか」
腕を緩ませた母親は、まるでクラスメートの男子をからかうみたいな顔をして笑った。