グッバイ・メロディー
⋆°。♬


3年に上がって、ひと学年9クラスあるうち、季沙が1組、俺が9組の、端どうしに配属されただけでもかなり納得がいかなかったというのに。

そのうえ、1組にはあの男(たしか木原とかいう名前だった気がする)がいる追い打ちをかけられて。

さらに修学旅行の班も木原と同じなのは、さすがにどう考えてもおかしい。


「ねー、いつまですねてるの」


クッションを抱いたままうずくまるように小さくなっている俺の背中を、季沙の指がむにむにと突いた。


「しょうがないじゃん。ヤコちゃんがショーくんを好きだって言うんだもん」


いわく、季沙のグループにいるヤコちゃんは、木原のグループにいるショーくんを好きなんだと。

だからこうなったのはしょうがなかったんだと。


なにがしょうがないのかさっぱりわからない。


まず好きなものどうしで班決めしてもいい、という自由すぎる制度がおかしいのだ。

俺のクラスはきっちり出席番号順だ。


「そのかわり3日目の自由行動はいっしょにいよ?」

「自由行動なんて班行動の100分の1だけど……」


ほとんどの行程が制服と決められているなか、自由行動のある3日目だけは私服を着用してもいいというんで、季沙はいまからなにを着ていこうかと胸を躍らせているようだ。


おまけにきのう沖縄のガイドブックも買ってきたらしい。


さっきからずっと鼻歌まじりでポストイットをべたべたと貼りつけている。

たぶん半分以上のページにつけている。


楽しそうな姿がこの上なくかわいいので、不毛な突っこみはしないでおく。

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