グッバイ・メロディー
「こうちゃん、大好き」
潰れるほどに強く、だけど壊れないように優しく、俺だけの唯一無二を抱きしめる。
「うん、俺も」
「やだー」
「なに」
「ちゃんと『好き』まで言って」
ふ、と笑ってしまう。
腕のなかからいつもの文句が飛んできた。
「俺も好き」
「こうちゃん」
「なに」
「『好き』の前にちゃんと『季沙』って呼んでくれないとダメです。やりなおしっ」
優しくて、あったかくて、かわいくて。
それと同じくらいわがままで、甘えんぼうで、たぶん、俺を困らせるのが無自覚に世界一得意で。
そうやって、さりげなく、ずっと寄り添っていてくれた。
「季沙」
生まれてから幾度となく呼んできたその名前を、これからも、あきれるほどに呼んでいく。
「俺も好き」
ありがとう、いつも。
ほかの誰でも、何でもなく。
季沙がそこにいてくれるから、俺はこの世界を生きていけるんだ。