グッバイ・メロディー
そしていつか
⋆°。♬


「こうちゃん! お布団干すからそろそろ起きて!」


強制的に布団を剥ぐとすぐに出てきた顔は、いきなりまぶたを太陽光に攻撃されて、まぶしそうにぎゅうと目を細めた。

かと思えば、次の瞬間には枕にずぶずぶと顔をうずめる。


「やだ……」

「やだじゃないー!」


そんなかわいい顔をしたって負けないんだから。


「どうせ自分ではお布団干したりしてないんでしょ? ホコリとか、ダニの死骸がいっぱいなんだからね! 怖いんだよ! ほらほらどいてー!」


カーテンを全開にすると、部屋にたちまち朝日の光が差しこんで、相変わらずのねぼすけさんは逃げるようにキッチンに消えていった。

のそのそ歩くうしろ姿はまだ半分夢のなかにいるようだ。


それにしてもとってもいいお天気!

お洗濯びより。

東京でも青いんだなって、広がる空を見上げて、当たり前のことになぜか感動する。


「こうちゃん、ごはん食べる?」


歯みがきと洗顔を済ませてきた幼なじみの恋人に問うと、彼はさっきよりもほんの少しだけ開いた目でわたしを見下ろし、首を縦に振った。


「フレンチトースト焼いたけど、それでもいい? 飲みものは?」

「コーヒー」


こうちゃんは基本的に、生活力がまるでない。

清枝ちゃんは仕事人間だし、こうちゃんって実家にいたころからひとり暮らしみたいなものだったはずなのだけど。

それにしたって、あまりにも生活力がない。


眠たそうにフレンチトーストをむぐむぐ頬張る姿を見ていると、やっぱりわたしも東京に来たほうがよかったんじゃないかって、ついつい甘えたことを思ってしまう。

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