グッバイ・メロディー
⋆°。♬


「お迎え、もう来てるみたいよ?」


急いでリュックに荷物を詰めこんでいるところに、はなちゃんの軽やかな声が落っこちた。

ふり向くと、教室のうしろのドアのむこうには見慣れた影が既に見えていて、一瞬焦ったら手が滑って、ペンケースを床にぶちまけてしまった。


「あああ……!」

「もー、ほんとにどんくさいな、季沙は!」


黒色のツヤツヤなボブヘアーが胸元のあたりで揺れたかと思うと、透き通るように白い指がひとつずつペンをすくい上げてくれる。


「そんなに急がなくても、ちょっと遅くなったくらいで怒んないよ、瀬名(せな)くんは」

「それはわかってるけど……」

「あーそうだね、瀬名くんのことは季沙がいちばんよくわかってるんだったね」


わかるよ。当たり前だよ。
こうちゃんとの付き合い、もう何年になると思っているの。


こうちゃんについて知らないことなんてきっとひとつもない。

それくらい大きなことを言えてしまうのは、生まれてから16年間、わたしたちがずっといっしょに育ってきたから。

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