グッバイ・メロディー


「もーほんとにいいよ、彰人(アキト)は」


はなちゃんはアキくんの話になると露骨にウンザリした顔をする。

それでもふたりはお互いの悪口を絶対に言ったりしないし、いまでもふつうに友達みたいだから、嫌いになってないのかと子どもみたいなことを聞いたことがある。
もううんと昔のことだ。


はなちゃんは、嫌いになれるほどたいして好きじゃなかったんだよ、と大人みたいなことを言った。

同い年のはずなのにいまだ恋愛経験ゼロのわたしとは大違いで、いまは大学生の彼とつきあっているというはなちゃんの話、いつもどこかフィクションみたいにすら思ってしまう。


「それより季沙、待たせすぎなんじゃない?」


ああ、そうだった!

背の高いうしろ姿がそろそろ退屈そうにしているのが目に入って、あわててリュックを背負った。


「じゃあはなちゃん、またあしたね!」

「はいはーい。瀬名くんにヨロシク」


あきれたように笑っている声を背中に、ちょっとだけ開いていたドアを勢いよく全開にすると、いつもの眠たそうな目がびっくりしたようにわたしを見下ろした。

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