愛なんていらない。
「相変わらずやな」
お互いに笑いあってそう呟いた。湧の視線がスヤスヤと眠る蒼に向く。
───特にこんなところが、な。
自分でも自覚済みだからこそ、時折切ない顔をする。とても傷ついた、寂しそうな顔。
俺が初めてこの2人に会ったときから、この関係は始まっていた。
その時から今まで全く変わっていない。
───湧が守って、蒼も守る。
馬鹿みたいにいい奴で。困ってる奴を放っておけない。だからこそなってしまったのかもしれない。
こんな誰も救われない関係に。
このお人好しに周りが助けられたとしても、自分たちが得をするわけがなくて。逆に損ならいくらでもするだろう。
だから、上手くいかないのが当たり前。
人間は守る側と守られる側が一緒になって、丁度よくピースがハマるから。
どちらも同じならば、余計に。
「どーすんだよ、お前」
「お前ってゆーなやー。で、何がや?」
惚けて尋ねれば、盛大なため息を吐かれた。
「泊まってくのか、って聞いてんだよ。まぁ今帰ったところで面倒なことになるのは見えてるけどな」
我関せず、と言うように話す湧。まるで他人事だ。
わかってて追い出そうとしているんだから尚恐ろしい。
「さっさと決めろ。泊まるんだったら準備だのがあんだよ」