愛なんていらない。


「お前、どう思う」


「言葉が足りないんや馬鹿」


ぐっという声が聞こえたが無視をすることにした。


「蒼が入ってる族のこと………波鬼のこととか、あの家の奴のこととか」


「あぁ…あれかぁ」



俺が思ってること、考えてることを言ったところで、何かが変わるとも思えないから。あまり深いところまでは探らないようにするけど。


湧の中で何かが変わるのだったら、言ってみるのも一つ、か。


「まぁ、波鬼のことはよく知らんけどな。俺も」


「そうだな…」と渋々というか、自信がないといったように頷いた。



俺たちは蒼を守りたくて。その“守る”っていうのは、縛るって意味じゃないと思うから。


「蒼が守りたい、て言うとんのやろ?…ならそうさせてやればいーんやないか」


「それは…」



「お前らの性くらいわかっとる。ただ、蒼のことはお前が一番理解してる」


「ただ見てろってか…?俺は、これ以上傷ついてく蒼なんか見てらんねぇ…」



あぁあ…泣きそうな顔なんかしやがって。

これだから蒼が離れらんねーんだろ、なぁ湧?


湧だって、本当だったら、傷ついて傷ついて、倒れそうだ。だからこそ支え合わないと立っていられない。



蒼と湧は、お互いのことがまだわかっていない。

近すぎて、見えない。お互いに遠慮してるからなんだろうか。──すれ違いが起こってしまったんだろうか。



お互いに、同じことを思ってる。


< 134 / 151 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop