愛なんていらない。
「お前、どう思う」
「言葉が足りないんや馬鹿」
ぐっという声が聞こえたが無視をすることにした。
「蒼が入ってる族のこと………波鬼のこととか、あの家の奴のこととか」
「あぁ…あれかぁ」
俺が思ってること、考えてることを言ったところで、何かが変わるとも思えないから。あまり深いところまでは探らないようにするけど。
湧の中で何かが変わるのだったら、言ってみるのも一つ、か。
「まぁ、波鬼のことはよく知らんけどな。俺も」
「そうだな…」と渋々というか、自信がないといったように頷いた。
俺たちは蒼を守りたくて。その“守る”っていうのは、縛るって意味じゃないと思うから。
「蒼が守りたい、て言うとんのやろ?…ならそうさせてやればいーんやないか」
「それは…」
「お前らの性くらいわかっとる。ただ、蒼のことはお前が一番理解してる」
「ただ見てろってか…?俺は、これ以上傷ついてく蒼なんか見てらんねぇ…」
あぁあ…泣きそうな顔なんかしやがって。
これだから蒼が離れらんねーんだろ、なぁ湧?
湧だって、本当だったら、傷ついて傷ついて、倒れそうだ。だからこそ支え合わないと立っていられない。
蒼と湧は、お互いのことがまだわかっていない。
近すぎて、見えない。お互いに遠慮してるからなんだろうか。──すれ違いが起こってしまったんだろうか。
お互いに、同じことを思ってる。