愛なんていらない。
「暫くは様子見、やな。俺は波鬼には帰したくないなぁ」
「あぁ。あそこにいたら、蒼はいつか壊れる」
「無理やり俺んちに連れてくのが最善策なんやけどなぁ」
前々から考えてること。それを呟けば、呆れた目を向けられた。
このロリコンめ、とでも思っているのか…
俺蒼と年あまり違わないし、ロリコンにはならないと思う。きっと。
「お前の家は蒼に悪影響」
きっぱりと言い切った湧に反論する術は…残念ながら、というか、悲しいくらいにない。
なんとなく悔しくなった。
「あそこに帰すよりはマシやろ」
「…それもそーだな」
「まぁ、今は何もせんでおく。その時がきたら動けばいい」
簡単に簡潔に、話の内容をまとめた。湧は黙って、俯いた。
きっと色々なことがぐるぐると頭の中を巡っている。蒼のことか…波鬼のこととか。
見た目には似合わず真面目な奴。
だから大丈夫だ。
「ま、気負いはすんなや」
「…ああ」
静かにそう答えた湧は、蒼をそっと抱き上げた。多分寝室に運んでいるんだろう。
…じゃなかったら恐い。
いやぁ、見事な熟睡っぷりだ…俺らの長話でも起きないとは。
こんな平和な時間が永遠に続けばどんなに幸せか。それを一番わかってるのは俺、だろうか。
それは勝手な俺の願いで。
だから、きっと、俺が動くしかないな。
sideend