愛なんていらない。
「お、はよう………何してんだお前」
作業を終えたらしい尚は、また別の作業を始めた。
なんの匂いだ?
「人様の家で怪しいことするわけないやろ…飯作ってんだよ」
人様の家で怪しいことするのが尚だと俺は思ってたんだけど…なぁ。
「いい眠りようやったで、あんま邪魔せん方がいいと思ってなー」
すましたーってよりは特になんとでもないような顔で、料理を並べ始めた。
楽しそうだな。意外に食えそうだし。
「あんま失礼なこと思ってると食わせへんからな?まぁええけど。
──さっさと蒼呼んできぃ」
「あぁ」
言われるがままに蒼を呼びに寝室へと足を向ける。
尚の意外な特技…料理か。
「蒼、飯だと。着替えて来い」
のろのろと開けた扉の先には、蒼が驚く様子もなく着替えていた。
咄嗟にドアを閉めて溜め息を吐く。
…少しは恥じらいを見せてもいいんじゃないか?
だんだんと熱を持つ自分の顔を自覚しながらも、無言のままリビングに戻り椅子に座る。
尚はそんな俺を一瞥して、椅子に座った。
弄られないのをラッキーだと思えばいいのか…触れられないことを無視されたように感じて悲しくなった。