愛なんていらない。



「構ってほしいのか放っておいてほしいのか…どっちかにしてくれや」


ケラケラと笑う尚に前言撤回の気分だ。


「はよー」


着替えてはいるもののまだ完全に目が醒めてはいないらしい。

そんな蒼に転ばないかと注意を図りながら椅子を引く。どこのお嬢様だよ…


体調が治ってるかが定かではないし、いきなり倒れてしまっても困る。



ふと尚を見ると、俺と同じような行動をとっていた。同じようなって言っても、俺ほど見つめているわけではないが。


結局、蒼は誰をも惹きつける奴だから放っておけない。


その点波鬼は………



「いただきまーす」


目が虚ろなまま朝食を摂ろうとする蒼。止めようとも思ったが、何故か箸がしっかり口に行っているから諦めた。


器用だな……


尚はその様子に驚いていた。

中々面白い画だ。



すごいな…と呟いている尚。きっと蒼は聞こえていない。

一応寝てるから、食べること以外の動作は不可能だろうな。


でも刺さったら危ないな。


「蒼、起きろ。目に刺さったら危ねぇだろーが」


小さい声では尚と同様、聞こえないだろうから、なるべく蒼の耳元付近で言う。

それが伝わったらしく、目を醒ますために洗面台へと向かった。


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