愛なんていらない。
「こっちってよりは、ここ?」
「はぁ?それは俺に無断で決められることじゃねーだろ」
「大丈夫やって」
俺を宥めるように、ほらー、と指を隣に向けた。
その意味を理解できずに首を傾げていれば、「あぁ」と小さな呟きが聞こえた。
「そっか。空き部屋なんだっけ、隣」
「そーゆーこと」
「ビンゴ」と笑顔になる尚。
それも一応俺に相談するべきなんじゃ…
視線をずらせば、いつの間にか黙々と食事に入っていた蒼がみえた。
目が覚めたから、もう危なくはない。
「蒼。お前はどーすんだ」
一瞬ピクリと反応して。食べる手はそのままで返答を考え始めた。
そこまで考えることだろうか。
あぁ、そうか。
これからには勿論、学校に行くか…行けるかとか、その後のことも蒼には必要なのか。
「いつまで…」
「ん?」
「いつまで、此処にいていい?」
俯いて、表情は見えていないけど、何故か泣きそうに感じる蒼の頭を撫でる。
そうすればそろりと顔をあげた。
「いつまででもいい。ここにはもうお前の居場所ができてるだろ」
「せやせや」
蒼は更に泣きそうな顔になって、それからくしゃりと顔を歪めて笑った。
共感して頷く尚に「お前は思うな」と一言言っておく。