愛なんていらない。




「抱え込みすぎなんやろーな、蒼は。そんで弱さを出さないから、みんな、頼ってまうんやな」


声のトーンが明らかに低くなった尚。

俺と同じようなことを考えているんだろう。


俺よりは尚の方が危なくて、きっと俺より先に突っ込んでいきそうだ。


今は冷静さを保っているから大丈夫だろ。




本気になれば、波鬼は潰れる。確実に。



「湧……心配し過ぎだよ!大丈夫、いざってときは湧がいるし。あ、尚もね」


俺から離れた蒼は、笑顔を作って明るく振る舞う。


忘れんなよー、と言った尚とじゃれあう姿は完全に子供。



じゃれあう二人を何も言わずに眺める。





蒼の言ったとおりだ。


俺と尚は、蒼の帰る場所になってやるだけでいい。


それ以上のことは、蒼が望まない。



それだけでも望んでくれるだけ嬉しく思わないと、頼ってもらえなくなる。

それが1番怖い。



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