愛なんていらない。
「…ぼーっとしすぎや。蒼が心配してまうやろ」
「わりぃ」
見送りに行っていた尚が戻ってきた。
ため息をつき、呆れた視線を向けてくる。
「考え過ぎんのは悪い癖や」
食べ終えていない朝食に手をつけながら、悪態をついている。
俺と蒼のことに関して、一番理解してるのは案外こいつなのかもしれない。
二人の共通の知り合いなんて少ないから、余計にそう思ってしまうのだろうか。
俺はもちろん、蒼も尚を信頼している。
だから、裏で俺の知らないことを相談していたとしても、不思議じゃない。
今更嫉妬はしない。
見苦しすぎる。
「お前ってクール系でやってんの?蒼の前以外」
「蒼の前では調子がでんわ」
「ははっ、それもあいつの長所だろ」
尚は昔から世話焼きだったけど、蒼の前だとオカンと化す。
蒼も面白がってわざわざ怒られようとする。
そして俺はそれを見守る…
「見守っとけや。
傍にいられる今のうちに 、俺らが唯一できることをやらんとな」
「ああ」
迷ってる時は道を提案してくれる尚。
俺が冷静になれない分、大切なことを諭してくれる。