愛なんていらない。
いつも助けられてる。
「お前のは俺と蒼がいて、俺にはお前らがいる。これ結構重要やからな」
微笑んだ尚に「ありがとな」と呟く。
聞こえていないことを願うばかり。
「…俺は一旦戻る。全部任してきたから改めて引き継ぎをせんとあかん」
「お前なぁ…」
呆れて言葉を失う俺に、「んじゃ」と手を振り、ジャケットを手に出て行った。
自由な奴だ…
誰もが羨むであろうモノを、積み重なった書類のように放り捨ててしまう男。
それが尚だと俺は勝手に思ってる。
ため息をつき、蒼と尚が残していった食器を台所に運ぶ。
水の流れていく音が、人のいない部屋に響く。
これからこの場所をあいつらの居場所にできるんだろうか。
広くもない部屋を見渡し、また深く息を吐いた。