愛なんていらない。
「そーだよ、陽架李」
寝ていたはずの彼が言葉を発した。
少し動いたことで、くすぐったい感触に身をよじった。
ふふ、と笑った彼が、欠伸をしながら体を起こした。
「僕は陽架李が大好きだよ」
「千夏…」
満面の笑顔を見せた千夏は、鼻歌交じりにスキップをして、部屋を出て行った。
行き先はおそらくコンビニ。
寝起き後のおやつでも買いに行ったんだと思う。
何かと理由をつけてはお菓子を食べたがる千夏。
たまにそれだけで1日を過ごしてしまう。
栄養が偏るから注意してはいるけど、どうも誰かが監視しないと駄目らしい。
一応1日1食は必ず食べるようになったからマシだけど。
陽架李がずっと言い聞かせてくれたお陰だ。
小さい頃からのくせだから、今更誰かが治してしまうことは不可能だけど。
少しでも変えられたのは凄い事だと思う。