不器用な彼と器用な彼
プロローグ
「美咲!」
あたしを呼ぶ彼の低い声がする。
美咲「っん?」
重い瞼をあけると、幼馴染のマサトが仁王立ちしている。
ここどこだっけ?あたりを見渡すと、薄暗くなった教室の中だった。
そうだ…あたし、マサトの部活が終わるの待ってるうちに寝ちゃったんだ!!!
マサト「お前何やってるの?家帰ったら、美咲んとこのおばちゃんが、美咲が帰ってこないって心配して俺んちにきたんだぞ」
美咲「えっ!!!ごめん!!!マサトと一緒に帰ろうと思って待ってて寝ちゃったみたい」
マサト「寝ちゃったみたいじゃねーだろ、部活終わるのとか待たなくていいから」
美咲「喜ぶと思って待ってたのに、そんな言い方しなくていいでしょ!」
売り言葉に買い言葉で、心配して迎えに来てくれたマサトに対して、
ついついけんか腰になってしまう。
あたしの鞄をガサっと掴み、ツカツカと帰路につく彼の後を慌てて追いかける。
彼の言い方に腹が立つし、素直に心配してくれてありがとうって言えない
自分にも腹が立つ。
無言のまま歩く帰り道、ふとひと月前の出来事を思い出す。