あなたの恋を描かせて
ポロポロと綺麗な瞳から涙が流れ落ちていて、思わずぎょっとする。
「えっ?ちょっ、葵?」
「うぅ…やだ……やぁっ………ふえぇ……」
本格的に泣き始めた葵に天を仰ぐ。
どうすればいいんだ……
「葵、泣かないでよ……」
結局ありきたりなことしかできなくて、慰めてそっと流れる涙を拭う。
「、ひっく……ふっ…さびし、かったの……」
少し落ち着いたのか、泣きながら葵は途切れ途切れに言葉を紡ぐ。
「背中が…ひーくんの、背中……どんどん、遠くなって………見えなく、なって……行かないでって、言ったのにぃ……」
ぎゅうっと俺のシャツを掴んだ手が、微かに震えていた。
「っ、嬉し、かったの……」
「嬉しかった……?」
こくん、と小さく頭を振る。
「いきなりで、びっくりしたし…恥ずかしかったけど……ひっく…嬉しかったもん…
ぎゅうって、してくれた、のも……ちゅう、してくれたのも……
すっごく、嬉しかったもん…」
葵の言葉が信じられなくて、すぐに反応ができなかった。
だって、つまり……うぬぼれでなければ、水無瀬さんは、葵は……
期待してはダメだと思いながらも、心のどこかでしてしまう。
「……き…」
俺が何も言えない中、真っ直ぐな瞳が俺を映した。
「わ、たし……城越くんが、好きなの………」
ポロ、と葵の瞳から綺麗な雫が一粒こぼれた。
「好き、好き……大好き………好き、なの…」
葵がそう言う度に、熱いモノが胸の中に溢れる。
こんなに弱くてズルい俺を、葵は好きだと言ってくれた。
無理矢理でも、葵を繋ぎ止めようとして卑怯なことをした俺を、好きだと……