あなたの恋を描かせて
「本当に、ご迷惑をおかけしました……」
玄関先で深々と頭を下げる浅葱に、こっちが申し訳なく感じる。
「浅葱は悪くないだろ。どっちかというと悪いのは……」
ス、と後ろを振り向くとわざとらしく外された。
自覚はあるわけだ。
まぁ、この二人のおかげで葵の本音を聞けたから、そこまで責める気持ちは俺にはない。
浅葱は責めてもいいと思うけど。
また今度会おう、と軽い約束を交わして、俺たちは浅葱と別れた。
帰り道
「そういえば、水無瀬さんってあのときの記憶あるのかな?」
「記憶?」
「あぁ、浅葱くんが言ってたわね」
「?」
話の意味がいまいち分からない俺は颯を見る。
すると、目で俺の言いたいことが分かったように颯は苦笑した。
「浅葱から聞いたんだよ。水無瀬さんは熱をだしてるときの記憶がないらしい」
「…………」
つまり、今日のことは覚えてないということ?
「そういうこと」
「城越も災難よね」
苦笑する颯と哀れみの目を向ける赤崎さん。
「ふーん……」
「あれ、あんまり気にしないんだ?」
「まぁ」
考え方によっては、今日の俺の醜態をバラさずにすむってことだし。
そう悲観することでもないと思う。
あ。でも告白(?)もなかったことになるのか……
葵の気持ちは分かっているとはいえ、やっぱりもう一度言うのは緊張する……
考え込む俺に、二人は顔を見合わせて微笑んでいた。