あなたの恋を描かせて
「葵!!」
放課後になり、廊下でちなつちゃんに呼び止められる。
「どうしたの?」
「お願い!ちょっと付き合ってくれない?」
「え……」
どうしよう……今から部活に行こうと思ってたんだけど。
でもちなつちゃんからのお願いなんて初めて……
お願い!と手を合わせるちなつちゃんに心が揺れる。
ちょっとぐらいなら遅れても大丈夫だよね?
「いいよ」
「ほんと?ありがとう」
ニコッと笑ったちなつちゃんにわたしもつられて笑顔になった。
どこに行くんだろうと思いながら来たのは体育館。
わたしのお気に入りの場所の近くにあるあの体育館だった。
こんなところに何の用事だろう。
というか、何、この大勢の人。
しかもほとんどが女の子で。
………無駄だとは思うけど、行きたくないな。
「ちなつちゃん」
「ん?」
振り返ったちなつちゃんの顔は心なしか楽しそう、というか……
なんだか輝いていた。
「ここで何かあるの?」
「今日、うちの剣道部が近くの高校と練習試合なのよ」
「そうなんだ…」
知らなかったな。
そういえばここの剣道部って強いんだよね。
大会の結果発表とかでもいつも表彰されているし。