あなたの恋を描かせて
「水無瀬さんも来てくれてたんだね」
「ちなつちゃんに誘われて…」
そっか、と爽やかに笑う颯くん改め楠くんに、さすがちなつちゃんの彼氏だなぁ、と思ってしまった。
「よし、じゃあ帰ろうか」
いつの間にか城越くんもここにいて、楠くんの一言でわたしたちは校門に向かった。
四人で歩いていると自然と二人組になり。
ちなつちゃんと楠くんが前を歩いて、わたしと城越くんは後ろを歩いていた。
き、昨日も隣同士で歩いたとは言え、それは傘があったからで。
こういうの、慣れないなぁ。
「今日は部活なかったの?」
「え?」
その質問が自分に向けられたものだと理解するのに、多分三秒はかかったと思う。
「美術部、だよね?」
心配そうな声にはっとする。
「は、い……あ、えっと。部活は今日は休んでしまって。
本当は行くつもりだったんですけど……」
あの人混みの中を抜けていく度胸なんてわたしにはなく。
結局休んじゃったんだよね。
「でも、もともとちゃんとした活動をしているわけではなくて……
描きたい人はご自由にどうぞ、って感じの部活なので」
休んでも大丈夫ですよ、と言うとそっか、と城越くんは言った。
……これは、心配してくれたって思ってもいいのかな。
ちょっと自惚れかもしれないけど。
でも、そうだとしたら少し嬉しいかもしれない。