あなたの恋を描かせて
午後の授業も終わって放課後になった。
わたしはちなつちゃんと明乃ちゃんに手を振ってから部室に急ぐ。
昨日はちなつちゃんと剣道部に行ってて、部活行けなかったもんなぁ。
今日はあそこに行って絵を描こう。
そう考えるだけで自然と顔がほころぶ。
それぐらい、わたしにとって絵を描くことは大切な時間。
部室にカバンをおいて、スケッチブックと色鉛筆を持つ。
そのままわたしは外に出た。
その途中、なんとなく体育館を覗いてみる。
「うわぁ………」
よ、予想通りだけど予想外。
体育館の周りには昨日と同じぐらいの人混みが……
言うまでもなく全員が女子。
わたしが剣道部を見に来たことがあるのは、ちなつちゃんに連れてこられたあの日だけで。
練習試合があったからあんなに人がいたんじゃなくて、いつもの練習でもこんなに人が来るんだなぁ。
ちょっとだけ、剣道部の人たちが気の毒になってしまった。
「こんなことしてたらまた時間なくなっちゃう……」
もう一度体育館に目を向けてから、わたしは林の中に入っていった。
いつものベンチに座ってスケッチブックを開く。
オレンジ色の鉛筆をとって、わたしは目の前のツツジを描き始めた。
真っ白な紙に色とりどりの花が咲いていくこの瞬間が好き。
まるで命を与えていくような……そんな感覚。
自分が思った通りに描けると、心がすごく満たされる。
やりがいがあるって言うのかな。
「ふぅ………」
一息ついて空を見上げると、空が赤く染まっていた。
「また集中しすぎちゃった……」
ぐっと背伸びをしてからスケッチブックと色鉛筆を片付ける。
それを大切に抱えて、わたしは部室に寄ったあと、家に帰った。