あなたの恋を描かせて
side 日向
うるさい……
「きゃーーーっ!!日向くーんっ!!」
「かっこいいー!!」
「こっち向いてぇー!!」
ほんと、勝手に名前を呼ばないでほしい。
自分の知らないところで自分の名前が人に知られているのかと思うと、少し恐怖を感じる。
「相変わらずのギャラリーだな」
苦笑しながら来たのは颯。
こいつも何だかんだでモテるけど、彼女がいることが発覚してからは、そんなにこいつのファンは来なくなかった。
まぁ彼女が怖いからな。
「いい加減あの声やめてほしいよ。集中できない」
「同感」
そう言っていてもあの女子には聞こえないんだろう。
思わずため息がもれそうになったところに、ちらりと見えた黒髪。
まだ数えるほどしか会ってはいないけど、なぜか後ろ姿でもその人が誰なのか分かった。
「水無瀬さん…?」
「え、水無瀬さん来てるの?」
「あ、いや……」
視線を戻すとその黒髪はもう見えなくて。
……見間違えだったか?
「日向?」
「……やっぱりなんでもない」
颯は不思議そうな顔をしながらも、主将の声がして俺たちは練習に戻った。
そのあと少し練習をして休憩に入る。
この時間が一番落ちつけない。
なぜなら……
「日向くん、このタオル使って!!」
「それよりも飲み物どうぞっ!」
「汗拭いてる姿もまじかっこいい〜!!」
…………休めないんだけど。