あなたの恋を描かせて




「………颯」


「うん?」


「あとは任せた」


「っ、は!?おいっ、日向!?」



後ろから聞こえる声を無視して、俺は全ての女子を颯に押し付けて外に出た。


女子から逃げて少しほっとする。



それよりも、さっき少しだけ見えた黒髪……


あれが気になって仕方がない。



確か、このあたりで……


少しうろうろしていると、林のところに人が通ったような跡が残っていた。



もしかして、この中を通っていったのか?


何のために?



少しの好奇心が湧いてきて進んでみる。



しばらく進むと、少し先が明るくなっていた。


不自然な光に、スペースか何かあるのかと不思議に思う。


できるだけ音をたてないように近づいて、俺は目を見張った。





そこは夕方の優しいオレンジ色の光で満ちていた。



ぽつん、と白やピンクの花に囲まれるようにあるベンチに水無瀬さんが座っていて。



その瞳は見たことがないぐらい生き生きと輝いている。



頬はほんのりと色づき、口許は優しく微笑んでいて。



初めて見たその表情に、俺はどうしようもなく惹かれた。



ドクッと、高鳴る心臓。





あぁ、きっとこれが



 "恋"に落ちるってことなんだな―――





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