あなたの恋を描かせて
「わたしが中学のとき使っていたスケッチブックって知らないかな?」
どこに片付けたのか忘れちゃって、と言うと珍しいねぇ、と言われた。
「んー……どんなのだったかしら?」
「青色のスケッチブックで、英語で名前が書いてあるの」
少ししてお母さんは小さく声をあげた。
何か心あたりがあるのかな?
少しの希望を抱いてお母さんを見る。
「あれねぇ、見本にちょうどいいかなぁって思って」
「うん」
「前にねぇ、向こうのおうちに置いてきちゃったの」
ごめんねぇ、とふわふわお母さんは笑う。
………うん?
「む、向こうのおうち、って、お母さんがやってる絵の教室?」
そうよ〜、と笑っているお母さんに唖然。
それはいくら探しても見つからないわけですね……
じゃない!!
「こ、困るよ!明日持っていくって友だちに言っちゃったのに!!」
ど、どうしよう……
おろおろしているわたしを見て、お母さんは少し困ったように笑うだけ。
時計を見るともうすぐ十一時になる。
……今から行くのはさすがに怖いな。
どうしようか悩んでいると、お母さんは誰かに電話をかけ始めた。
お父さんかな。
今日は帰ってこられないって聞いたけど……