あなたの恋を描かせて
「颯ー、お昼行くわよ」
教室の中から分かった、という楠くんの声が聞こえた。
この瞬間、人に注目されているような感じがする。
ちなつちゃんは平気な顔してるけど、わたしは慣れないなぁ。
思わず手提げをぎゅっと抱きしめる。
「お待たせ、行こっか」
少しして楠くんと城越くんが来て、わたしたちは学食に向かう。
「それ」
「え?」
仲良く話しているちなつちゃんと楠くんを後ろから見ていると、城越くんがわたしの持っている手提げを指さした。
「昨日言ってた絵?」
「うん……」
「楽しみにしてる」
顔をあげると、優しく微笑んだ城越くんがわたしを見ていて。
カアァッ、と顔が熱くなった。
「あ、あまりハードルをあげないで……」
赤くなった顔を見られたくなくて下を向くと、上からクスクスと笑う声が聞こえた。
それと連動するみたいに心臓が速くなっていく。
あぁ……学食に着くまでに顔の熱と心臓の鼓動、おさまるといいんだけどな。
「じゃ、俺とちなつは何か買ってくるから」
先に座ってて、と言われてわたしと城越くんは四人がけのテーブルに座る。
そういえば、二人きりって送ってもらったあの日以来だな。
「今日はお弁当なの?」
いつも学食で何か買っているのに。
不思議に思って聞いてみると、今日はコンビニでパン買ったんだ、と言われた。
城越くんもパン食べるんだ、と何故か当たり前のことを考えてしまう。
し、知らないうちに緊張してるのかな……