あなたの恋を描かせて




「だ、大丈夫です!!」


「でも、傘ないんでしょ?」


「ま、まぁ……」



確かにそうですけど……



「部室に行けば傘ありますし……もう少しすれば止むと思います」



ちらりと見ると変わっていない表情。


怒っているのか呆れているのか……わたしには分からない。



「それに、悪い、ですし……」


「ここで見過ごしてあとで風邪とかひかれる方がよくないよ」


「えっ!あ…う……」



そう言われるとそんな気が……


でもやっぱり迷惑なんじゃ……


迷っていると城越くんがまた「入っていきなよ」と言った。



「じゃあ、校舎までお願いします……」



結局はわたしが折れて、校舎まで城越くんの傘に入れてもらうことに。



い、今思ったけど、つまりこれって相合い傘、だよね。


あまり深く考えないで入れてもらっちゃったけど。


思っていたよりもずっと近い距離に、心臓がドキドキする。


そっと目線をあげると、わたしよりも高い位置に城越くんの顔があった。



こんなに間近に城越くんの顔を見たのって、初めてだな。


まぁいつも女子に囲まれているから、当たり前といえばそうなんだけど。



かっこいいな……


女子が騒ぐのもすごく分かる。



傷んでいないサラサラの茶色の髪に、黒に近い茶色の瞳。


すっと通った鼻に綺麗な肌、薄くて形のいい唇。



モテないわけがないよね。



「何?」


「あ、何でもないです」



もしかして、わたしが見てるのに気づいてた?


そう思うと恥ずかしくなって、わたしは顔を下に向けた。



あぁ、頬が熱い……




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