あなたの恋を描かせて




「……すごいね」



ぽつりと呟いたような声だったけど、ちゃんと聞こえて。


わたしははっとして城越くんを見る。



今の、聞き間違いじゃないよね……?



「すごいよ、これ。
俺は絵に関しては素人だけど、それでも全然他の人より上手だよ」



どうしよう…すごく嬉しい……


明乃ちゃんに誉められたときも嬉しかったけど。


でも、それ以上に城越くんに誉められたことが嬉しくて。


何故か泣きそうになってしまったけど、散々迷惑をかけた上に更に迷惑はかけたくなくて。


なんとか、我慢する。



「もう一つのも見ていい?」


「あ、うん!ど、どうぞ……」



あたふたして渡すと、それを微笑んで見てくれる城越くんに、わたしもつられて頬が緩んだ。


調子よく進んでいた城越くんの手が止まる。



「この絵……」



少し驚いたような顔にわたしは首を傾げる。


何かヘンな絵でもあったかな。



「どの絵?……あ」



城越くんが見ていたのは、あの場所で描いたツツジの絵。


夕陽に照らされていて、白いツツジが柔らかなオレンジ色に染まっている。



わたしが、好きな絵の一つ。



「俺、この絵好き」


「、へっ!?」



カアァッとわたしの顔は一気に赤くなる。



すすす、好きって……!!


わたしが言われたわけじゃないのに。


分かってるのに。


なのに反応してしまうなんて……っ、恥ずかしい。


でも、すごく嬉しくて。



なんだろう、この気持ち……






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