あなたの恋を描かせて
…………絶対に、あれだよね。
「どうしたの葵?」
「……ごめん、ちなつちゃん。今日は無理みたい」
途中だった帰りの準備を急いでする。
「ごめんね、ちなつちゃん。楠くんも城越くんもごめんなさい!」
カバンを持って教室を出る。
でも、やっぱり申し訳なくて……
もう一度三人に謝ってから、わたしは玄関に向かった。
急いで階段をおりて靴を履き替えて外に出る。
う……遠目からでも不機嫌なオーラが……
女の子たち、よくあんな状態で近づけるなぁ。
すぅっと息を吸い込む。
「浅葱(あさぎ)!!」
少し遠いところから声をかけると、浅葱と周りの女の子がこちらを向いた。
「葵……遅い」
「ご、ごめん」
安心したような声を出して、浅葱は女の子の中から抜けてくる。
「本当にごめんね。メールに気づいたのさっきで…」
「べつに、もういいから」
「よかった……」
ほっとして頬が緩む。
「それより、あれ」
「…??」
浅葱の見ている方に目を向けると、教室の窓からちなつちゃんたちがこちらを見ていた。
表情までは、よく分からないけど……
わたし、ちょっと目が悪いんだよね。
「あれ、何?」
「わたしの友だちだよ?」
「ふーん……」
じっと見ている浅葱に首を傾げる。
浅葱はメガネをかけているから、三人の表情も見えてるのかな。
「行くぞ、葵」
「うん」
先に歩いていく浅葱を追いかけて、手を繋ぎながらわたしは学校を出た。