あなたの恋を描かせて
親しげに話す姿。
見たくないはずなのに、俺の目は釘付けになってしまった。
ふと、男子がこちらを向く。
そのあとは水無瀬さんも。
何か話をしてから男子はこちらに背を向け、そのあとを水無瀬さんは走っていった。
隣まで行ったかと思うと、二人は手を繋いで校門を出ていった。
「え、と……日向…」
「俺、帰るわ」
「お、おぉ……」
戸惑う颯と赤崎さんの姿は見えていたが、今はそれを気にしていられるほどの余裕はなくて。
俺は二人を置いて教室を出た。
あんなに温かなもので満ちていた心が、今は黒いモノに支配されている。
あの男子は誰?
どうしてあんなに親しげに話していたの?
もしかして彼は水無瀬さんの………
考えれば考えるほど、胸の中がどす黒いモノに溢れていく。
まるで底無し沼の中にはまっていくような感覚。
嫉妬、ヤキモチ。
そして独占欲。
このどす黒い感情に名前を付けるなら、きっとそういうモノだと思う。
でも、分かったとしてもこの感情を無くす方法なんて分からなくて。
モヤモヤとした気持ちの中、俺は家に帰った。